5.2 親疎関係による使用実態 .................................... 35
5.3 まとめ .......................................... 42
第 5 章 割り込み発話の機能
5.1 機能についての考察
本節では、『BTSJ 日本語自然会話コーパス 2020 年版』の調査結果による割り込み発話の機能の考察について述べる。
先行研究のところで論じているように、割り込み発話の機能の種類についての分類がさまざまある。陳(2017)によると、「協調的な割り込み」が、先行話者の発話権を奪い、相手の発話を妨害するような発話として捉えているのに対し、「支配的な割り込み」は相手の発話権を取るわけではなく、相手への共感を示したり、先行話者とともに会話を構築したりして相手の発話を促進するものとして捉えられるという。本稿では稲垣(2000)と陳(2017)の分類基準を参考にして割り込み発話と会話の進行及び人間関係の維持との関係をもとに、さらに後続発話が先行発話に対して担っている機能を総合的に判断しつつ、割り込み発話の機能を大きく「積極系」と「消極系」に再分類する。「積極系」は先行話者の発話を優先し、会話の進行を促進したり、場の雰囲気を良くするためのような積極的な役割を果たす割り込み発話を指すのに対し、「消極系」は話し手の自身の発話を優先させ、会話の進行を妨害したり、相手の気分を害するような消極的な役割を果たす割り込み発話である。そして、それぞれの下位分類は、長谷川(2005)と陳(2017)を参考にして表9 のように設定する。具体的には、「積極系」には「フィードバック」、「完結•補足」、「確認•関連質問」、「情報追加」、「先取り応答」、「話者助け」の六つがあり、「消極系」には「新情報提示」、「総括」、「訂正•反論」、「継続戻し」の四つがある。
終章
6.1 本研究の結論本研究では、親疎関係による割り込み発話を把握するために、『BTSJ 日本語自然会話コーパス 2020 年版』を調査資料とし、分類と位置と機能の視点から日本人友人同士の会話と初対面同士の会話の特徴を包括的に考察した。
今回の研究結果から明らかになった具体的な結果は以下のようにまとめられる。
第一に、『BTSJ 日本語自然会話コーパス 2020 年版』から選定した会話例文から見出した割り込み発話の数は合計 638 例であった。そのうち、初対面同士の会話における割り込み発話は 280 例であり、友人同士の会話における割り込み発話は 358 例であった。この結果から、親疎関係という社会要素が割り込み発話に影響を与えていることが明らかになった。一方、初対面同士の会話における割り込み発話の頻度がそれほど少なくないことも分かった。
第二に、初対面同士と友人同士の会話場面における割り込み発話を分類、位置、機能の側面から使用実態や特徴を明らかにした。
①割り込み発話の分類については、先行研究に基づき、「成功した割り込み発話」と「失敗した割り込み発話」に分けた。そして、「失敗した割り込み発話」の下位分類には「ターンの並列」、「ターンの挿入」と「早めに開始したターン」がある。場面差に注目すると、初対面同士の会話場面より、友人同士の会話場面のほうが割り込みやすい傾向が窺えたが、それほど大きな差ではなかった。また、分類による両場面の出現回数と頻度を比較してみると、両場面ともに「失敗した割り込み発話」の頻度が高いことが分かった。分かった。一方、初対面同士の会話場面よりも友人同士の会話場面における「成功した割り込み発話」のほうが圧倒的に多いことも明らかになった。
②割り込み発話の位置については、「ターンの末尾」、「先行発話の開始直後」、「ターンの中に短いポーズがある箇所」、「ターンの中に短いポ一ズがない箇所」に分け、分析を進めた。両場面における割り込み発話の位置の傾向はほぼ一致していた。友人同士の会話では、「ターンの中に短いポ一ズがある箇所」>「ターンの末尾」>「ターンの開始直後」>「ターンの中に短いポ一ズがない箇所」になり、初対面の会話では、「ターンの中に短いポ一ズがある箇所」>「ターンの末尾」>「ターンの中に短いポ一ズがない箇所」>「ターンの開始直後」となった。どちらの場面でも「ターンの末尾」と「ターンの中に短いポーズがある箇所」で割り込みやすいが、初対面同士の会話では「ターンの開始直後」での割り込み発話はあまり見当たらなかった。
参考文献(略)