日文论文翻译栏目提供最新日文论文翻译格式、日文论文翻译硕士论文范文。详情咨询QQ:1847080343(论文辅导)

小熊秀雄全集(おぐまひでおぜんしゅう)-05

日期:2018年01月15日 编辑: 作者:无忧论文网 点击次数:1190
论文价格:免费 论文编号:lw200906191537574618 论文字数:6000 所属栏目:日文论文翻译
论文地区:中国 论文语种:日文 论文用途:职称论文 Thesis for Title
相关标签:小熊秀雄全集

茫漠たるもの
茫漠たる不安のために
私は必死となる
野であり、山であり、村落であり、海であり、
都会であり、村であり、空中であり、
地下道である。
すべての上に住み、
すべての中に住む、
そして何処にも不安がある、
そしてその不安を私の力で埋めようとする、
私はそれが出来るか、
私は知らない、
簡単明瞭な私の答へよ、万歳、
いま私は仕事の最中
突然衝動的に一米突とびあがる、
この異様な感動は
いつたい私の脳の
何番目の抽出(ひきだ)しにあつた奴か、
私は今それを調べてゐる、
抽出しにはかう貼紙がされてゐる、
――匂ひはロマンチック、
――性質はプロレタリア、
それでよし、それでよし
私の精神の処方箋、
私は単なる掃除人のやうであつていゝ
右から左へ、
精神を移す、
悪臭ある汚穢なるもの、
喧噪なるもの、不自然なるもの、
雑多な性質と、無性格、
天を掴む飛躍と、地をさらふ脱落
私のひとふきの喇叭に
あらゆる素材よ、飛んで来い、
そして美事に整列してくれ、
――宿命はつらいし、
――運命は信じ難い、
そのことだけを考へても
すぐ二三時間は経つてしまふ、
それを喜べ、
喜ぶことは良いことである、
私の絶望上手は、
精神の貧しさを悲しんでゐる、
高邁な精神には縁のないことを
つくづく考へる、
愚劣な精神の労働にも
異常な感動を覚えることはどうしたことか、
その時生き甲斐をかんじ
そのとき茫漠は去り、
友の哀れむべき精神の工場から
濛々と不安のけむりが
立ちあがつてゐるのを見る、
あゝ、その煙りは昼は灰色にみえ
夜は赤く美事に空に映つてゐる、
友は知らない、
その美しさを、
私だけがそれを見てゐる
私の美しさは私が知らない、
だが友達がそれを見てゐてくれるやうに、
友よ、たがひに信じよう、
恐るべき時代に生れ合したことを――、
歴史の空白を
吐息と、われらが糞尿と
言葉の塵芥と、血と、
むなしい労働と、小さな反抗とで埋めよう、
すべて意味深し、
それでよし、
私は誰よりも軽忽でありたい、
私は我等の勝利の万歳をまつ先に叫ぶ、
私は偉大な唖呆の役を買ふ、
水蒸気は濃霧だ、
その中に我等の意志は停船してゐる、
不安は霧だ、混濁だ、
この茫漠たる中で
君は化粧する時間など持つな、
ただ君の警笛のために
君の咽喉(のど)のために

 

まもなく霜が来る

さまよへ私の魂
春から冬までたどりつけ
私は季節の渡り者
髪は女のやうに乱れ、
こゝろもまたそのやうに乱れる、
そして男の中に、男と生れたことが
幸福であるか
ふしあはせであるかわからない、
もし良い世界がやつてきたら
私のやうな女性的なものは
なんの必要もないだらう、
ただ今はあらゆる男たちも
女でさへも
尚男性的に
生活に憤らねばならない
魂を怒りに勃発させることは
一人でも多い方がいゝのだから、
いくたびも春から冬まで
さまよふ
甘やかされてゐる男のために
罰はいつぺんにやつてくる、
我々はそれを怖れよ、
生活の中から正しい答へを
ひき出さなければならない
もう間もなく霜がくる、
葉は凍えようとしてゐる、
伊達(だて)なマントは綺麗だ
だが包まれた体ははげしくふるへてゐる、


ヴォルガ河のために

ヴォルガ河よ、
わが友よ。
流れよ
私は君を見たこともなければ
また君の流れの響をきいたこともない
ただ君が悠々たる水のかたまりを
陸続として
どこからともなく下流にむかつて
押しだしてゐることを知つてゐる、
しかも君は我々の住む同じ星の下にあつてである、
星、瞬くものは数億であつて
君の流れの響もまた無限である、
ヴォルガよ、
春はこゝに一片の花を押し流して
岸辺、岸辺に、その花を寄せ、
また岸から引離して
水と花びらとは気の向いたまゝに
連れ立つて行くであらう、
そして君の水面をすべる船には
見るからに質朴で頑丈な船人が
じつと水面をいつまでも見ながら
あるときは君にさからひ、
あるときは君に柔順であるだらう、
もりあがるヴォルガの感情
それに答へ得たところの
こゝに平凡な様子をした男が
偉大な河に竿さして
降るのを私は想像する、

あゝ、ヴォルガ河よ、
君はかつて幾度か裂けたであらう、
君はきつと怒りとウメキのために
立ちあがつたであらう、
あの時銃は沈み
河底の泥に今でも深く突立つてゐる
ムセ返る火薬の匂ひは
君の流れの上に
かげらふのやうに漂つた
うなだれて逃げる百姓の群を追つて
肥えた馬にのつた騎兵の一隊は
ヴォルガの岸辺で百姓達を
ことごとく滅ぼしてしまつたであらう、
そのときヴォルガよ、
お前は、それらのことを目撃した、
お前は怒つた、
歴史を流す河として
さまざまの事実を正しく反映した、
いまヴォルガ河よ、
沈着な河として
私達の喜びをお前へ披露することができる、
岸に倒れた百姓は
ロシアの百姓であつて
また決してロシアの百姓ではなかつた、
世界の百姓として――、
ヴォルガ河を枕として永遠に眠つた。
すでにして月は
イルミネーションとして君を飾る
君の沿岸に咲く野花の
なんとことごとく君の為めの花輪であらう、
すべてを冷静に眺めてきたヴォルガよ、
沈着な河、ヴォルガよ、
君はいま歴史を貫く国を
貫ぬいてゐる、
正義の河と言へるだらう。